「猫が30歳まで生きる日」を読んでー糖尿病で猫を亡くした私が感じたこと

【猫の病気について考える】猫の糖尿病闘病記など
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東大教授、宮崎徹先生の著書「猫が30歳まで生きる日」をすべての猫飼いさんにオススメしたい

糖尿病の猫の闘病生活を経験したからこそ感じること

「猫に健康で長生きしてほしい」「1日でも長く一緒に過ごしたい」これはすべての猫飼いさんの切なる願いでしょう。かく言う私も日々猫たちの健康と長生きのためにアンテナを貼り続け、良いと言われる方法があれば試しています。

「猫が30歳まで生きる日」は、東大教授で現在はタンパク質「AIM」研究の第一人者である宮崎徹先生の著書です。宮崎先生は猫とヒトの腎臓病をはじめとした「不治の病」に打ち克つ研究をされています。2021年、宮崎徹教授のAIM研究は「コロナ禍の影響で資金不足に陥り頓挫していたところ、そのニュースを見た愛猫家から所属している東大研究室への寄付が殺到し窮地を逃れた」というニュースが流れていましたのでご存知の方も多いかもしれません。

全ての猫にとって怖い病気であり、宿命ともいうべき病、腎臓病。2017年に愛猫を糖尿病で亡くした私も宮崎先生のこの研究にはとても期待しています。糖尿病の猫の闘病生活を経験した飼い主からの視点で「猫が30歳まで生きる日」を読み解いていきたいと思います。

腎臓病末期の猫ちゃん、余命1週間から奇跡の復活!

『AIM投与による顕著な効果』とは何か

この本を開いて冒頭のページで私はすでに目頭が熱くなってしまいました。その理由は腎臓病で末期腎不全の猫ちゃんたちが写真とともに紹介されており、回復の兆しを見せていたからです。キジちゃん、てとちゃんの二匹は末期腎不全で立ち上がることもできず、自力でご飯を食べる元気もなくなってしまっていました。そのような状態でも「AIM」を投与したところ元気が戻り、自力で動き回ったり食欲が戻り食事ができるようになりました。具体的には以下のような症状の改善がみられたということです。

『AIM投与による顕著な効果』

  • 全身の症状の著しい改善
  • 食欲の増進と体重の増加
  • 全身の炎症の低下
  • 貧血の改善

この猫ちゃんたちの飼い主さんは「どんなに嬉しかったことだろう」と思いました。「猫が病気になり日に日に食欲がなくなり痩せていくのを、ただ見ていることしかできない」そんな状況は飼い主にとって絶望の日々です。もちろん当の猫もつらいに違いありません。

猫はとても我慢強い生き物

それでも彼らは文句を言わずじっと耐えています。それが動物の本能であり、安全な寝床とご飯の保証がされているはずの飼い猫になっても消えません(通常、野生として外で暮らす動物にとって普段と違う様子を見せることは「死」を意味します。「弱っている」ということを外敵に教えることになり、襲われる隙を与えてしまうからです)。

そんな姿を見ながら病気の猫をお世話していると「明日の朝もこの子は目を開けて息をしていてくれるだろうか?」と考えてしまうことがあります。そう思うと眠ることさえ怖くなってしまいます。この本はネガティブになりがちな闘病生活をしているときにも、明るい希望を与えてくれるだろうなと感じました。

猫にとっての脅威、宿命とも言える不治の病「腎臓病」

現在の医学を以ってしても「不治の病」とされる腎臓病

現在も国内で1千万人以上の人々がこの病と戦っているそうです。腎臓病と聞くと「人工透析」を思いうかべる方が多いかと思いますが、人工透析はあくまで機能しなくなってしまった腎臓の代わりとして機械で補助しているだけであって、悪くなってしまった腎臓を治療する方法ではないそうです。

腎臓病の怖いところは、病気が進行していく時間を緩やかにしているだけであって、根本的な治療方法が見つかっていないことです。まだそのメカニズムが解明されておらず、決定的な解決方法がないので対処療法がとられています。一度腎臓病に罹患すれば、徐々に腎機能が衰えていずれ死に至る。これはヒトでも猫でもどんな動物でも同じです。

腎臓病は猫の宿命ともいえる病気

猫は老齢になるとほとんどが腎臓病になるそうです。それも猫という生き物の宿命ともよべるほどの確率で。これは猫だけではなく「ネコ科動物全般」に言えることで、なかでもチーターは寿命が短く、野生でも動物園の飼育環境にあっても8年程度だということです。そしてその死因は100%腎不全だというのです。

偶然の産物「AIM」とは?

猫との運命の出会い

「運命」「転機」「人生のターニングポイント」というのは、その真っ只中にいるときには気づかないものですよね。この本ではいかにして「AIM」を世に出すことができたのか、その困難と偶然が運命ともよべる奇跡に変わっていく過程が描かれています。

宮崎徹先生はもともと猫を救うための研究をしていたわけでも「AIM」という物質を探そうとしていたわけでもなく、自身が行ってきた研究の最中、偶然の産物としてそれを発見したということでした。もともと「AIM」は生き物の体内でどんな働きをしているのかわからない厄介なタンパク質でした。通常、研究者というものは自分の業績につながらないような研究はしないが、宮崎先生はなぜかこの「AIM」が気になって仕方なかったのだと言います。

幾度も困難に出会い、研究が頓挫しそうに

このあとも容易に「AIMは腎臓病に役立つタンパク質であり、猫の寿命を伸ばすことにつながりそうだ」という、ひとつの結論にたどりついたわけではありませんでした。紆余曲折やさまざまな人々との出会い、偶然が重なって研究を継続することができ、成果をあげることになるのです。

偶然見つかった「なんの役に立つのかわからないAIM」という物質をあきらめず粘り強く追求していく宮崎先生。しかしその間、幾度も困難に出会い、研究が頓挫しそうになります。途中、コロナ禍に見舞われて研究の資金繰りが厳しくなったりもしました。

不思議なことに、難局を迎えるたびどこからか救いの手が差し伸べられて危機を回避することになります。もし神様がいるとしたらちゃんと見ていてくれるんだなと思えるような奇跡を経て「AIM」は世に出たのです。

「AIM」は猫を救うのか ー猫の腎臓病薬ができることを信じて

腎不全の猫たちへの「AIM投与」と驚きの優れた効果

全ての生き物の中で「ネコ科の持つAIMが特殊であり、他の生き物と同様に機能しないこと」そしてそのことと「ネコ科の死因の多くが腎不全であり、腎臓病は猫の宿命ともいえること」の間に関係がありそうだということが宮崎先生の研究により明らかになりました。

そしてこの「AIM」をさまざまなステージにある腎不全の猫ちゃんたちに投与して、驚きの優れた効果をあげました。実際に実験や研究のほとんどはそうそう上手くいくことなく、膨大な時間と労力、研究費を費やしたからと言ってこちらの思惑どおりの結果が得られることはないのだろうと思います。そんな中でこのようなドラマティックな現実があることに感動と興奮を憶えました。「事実は小説より奇なり」だと感じます。

AIMという物質が腎臓病をはじめとした不治の病にどう作用して病気を治すのかは、ぜひ「猫が30歳まで生きる日」本編を読んでいただきたいと思います。

この本では宮崎先生の研究者・医師として仕事に向き合う中でAIMと出会い、不治の病を治す使命を見つける過程に感動させられます。

猫の腎臓病の薬、開発に向けて

まずはキャットフードから挑戦

人間用の薬を作るには「安全性を証明」しなくてはならず、複数回の治験からさまざまなデータをとりリスクを最大限減らした状態で世に出ることになります。安全性を担保せねばならないのはもちろんネコ薬でも同様ですが、人間用よりはプロセスが短いのでヒトの薬よりは早く世に出せるそうです。そしてネコ薬開発で培ったデータやプロセス、知見は人間用の薬にも応用できるため一石二鳥とのことでした。

とはいえ、薬ですからポンとできるわけではありませんよね。今後の宮崎先生の研究を応援しながら朗報を待ちたいと思います。このブログでもまた何か追記があれば追っかけていきます。

ネコのための薬「AIM」の完成はまだ先になりそうですが、宮崎先生が監修に携わられたキャットフードやサプリメントが発売されていますので、早速試してみました。これらは予防医学の考えのもとつくられていて、AIMの動きを助ける成分が入っているそうです。

実際うちの猫さんたち3匹にあげてみたところ、どの子もよい食べっぷりで食いつきが良いフードだと感じました。こちらのフードに関してはしばらく続けてみて、後日このブログでレポートしたいと思います。

「猫が30歳まで生きる日」は猫の腎臓病を助けたい!という 宮崎徹先生の熱い想いを感じる素敵な本だった!!

全ての猫とご家族のための希望が詰まった本

これは実際に現在腎臓病を患っている猫のみならず全ての猫たち、そして腎臓病と戦っておられる人々やご家族にとっても、希望を与える本ではないかと思います。

先生はもともと猫の薬を開発するために医師になられたわけではありませんでした。しかし結果的には猫の腎臓病と向き合い患者(猫)とその家族と接する中で、彼らを癒したい、助けたいという心持ちを強くしていきます。

どんな功績をあげた人も皆そうなのだろうと思いますが、日々真摯に粛々と自分のやるべきことに向き合っていた結果、使命を見出すのですよね。そのくだりにとても感動しました。

“なんとかしてこの腎臓病のネコを治してオーナーさんたちをハッピーにしたい。これは、特に研修医のころにいつも感じていた気持ちだった。いつしか、患者ネコやそのオーナーさんに対する思い入れは、人の患者さんとそのご家族への想いとまったく同じものになっていた。”(「猫が30歳まで生きる日,p186より引用)

宮崎先生の研究所へ心ばかりの寄付をしました

私も以前、AIMの研究が資金不足で頓挫するかもしれないという記事を新聞で見て、ほんの微力ながら東大の寄付募集へ寄付させていただきました。現在では東大宛ではなくこちらで寄付を受け付けているということです。少しでも病に苦しむ猫や人を減らせますように。

●一般社団法人AIM医学研究所 (宮崎徹先生が立ち上げた法人です)

かなり少額ですがご丁寧なお手紙までいただきました。お返事は不要なのでその分を猫たちへ回してほしいと思います。

最後に「本書の印税の一部は、ネコと人間の腎臓病研究などの費用に充てられます。」とのことですので、ご興味を持たれた方はぜひ古本ではなく新品を書店でお買い求めいただければ、私もとてもうれしく思います。

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